唇を甘噛みされて、その快感に震えた。
キス。
たかがキス。
されどキス。
唇を合わせるだけで下半身に血液が集中するなんて……。
少し波間を彷徨っていた俺は、ごそごそとズボンからシャツを引き抜かれる感触で我に返った。
「ちょ…マイルッ」
「少しだけ、少しだけタレンを感じさせて」
「待てって」
手を持って制すると、寂しそうな瞳が降ってくる。
そんな顔されちゃ、文句が、言いにくい……。
俺は再び抱きこまれて、マイルのペースにはまっていった。
木の幹に背中を預けた姿勢でなすがままにされる。
少しだけ、少しだけだから、と自分に言い聞かせながら、マイルの唇を受け止めていた。
「フッ……」
首筋に下がった唇の感触で思わず息が漏れる。
マイルしか経験ないからわからないけど、うまいのかなぁ……。
でも、デリカシーはなさそうだ。
今までも、そうだった。
なのに、すっかり前のボタンを外さ、肌をむき出しにした俺に「寒くないか」なんて何度も尋ねてくる。
調子が、狂う。
「へ、いき……暑い、くらい」
そう返すのが精一杯で、俺は彼の柔らかい髪をぐっと掴んだ。
何かにしがみ付かなければ、何処かに浚われてしまいそうで怖かった。
前にも何回かこういうことはあって、マイルの誕生日のときも…その、最後までして、そして今回。
なんかゾクゾク感が増えているというかなんていうか……。
鎖骨のところを舐められて、吸い付かれて、息も荒くなるし、下半身も熱くなる。
「こっちも……」
服の上からなぞられて、首を反らした。
先ほどより強い快感が欲しくて、「少しだけ」なんて口走ってしまう。
恥ずかしいけど、俺だって男だし、こうなったからには出したいって思うから……。
慣れた手つきでベルトを外されて、前を開けられて、取り出される。
乾いた空気に触れて、少し震えた。
「僕のも」
「う、うん……」
同じように前を寛げて……戸惑う。
「タレン?」
えぇいままよ、で取り出して、太い竿を掴んだ。
「ン……」
鼻に抜けた声。
「気持ち、イイ?」
「ああ、凄くイイ」
もう一度キスを求められて、お互いを擦って達して終わり。
だと思ってた。
だけど、なんか、ウシロがむず痒くなって来るんだ。
一度そこで感じた経験があるからだろうか。
他の刺激が欲しくて、身体の中を虫みたいのが駆け巡ってくる。
そんなことを知ってか知らずか、空いた手で俺の尻をやんわりと撫ぜてくる。
でも、欲しいのは、欲しい刺激はそこじゃなくて……。
思わず涙が出た。
いつの間にか自分の身体が、自分のものじゃなくなった感じがして、情けなくて。
「ご、ごめん。いやならもう…触らないよ」
「ち、ちが……」
「……タレン?」
滲む涙を吸い取られてながら、後で目を冷やして置くように言われた。
フィズ少尉に悟られるだろうから、その助言はありがたく受けておく。
宥められるようにキスをまたされて、勢いを失わない俺を擦られて……。
でもやっぱり欲しい刺激は貰えなくて。
どうしたらこのムズムズは消えるんだろうか。
俺が悶々しているとオクトが言いにくそうに聞いてくる。
身体は勿論だ、と言うのだけれど、何故だか大きなしゃくりがでた。
「どうにかしてくれよ、馬鹿ヤロー……」
中途半端にズボンを下ろされて、マイルに抱きついたままウシロを弄られる。
指を入れられたり、周りを擦られたり、色んなやり方で翻弄される。
俺はマイルを握ったまま、陸に上げられた魚のように口をパクパクさせるだけだった。
「ンゥ……」
入ってくる感覚よりも、抜くときの方が凄い。
なんだろうと思ったら、少し指を曲げているみたいで、えっと、中に引っかかって……それが刺激に……ごにょごにょ。
マイルは俺が反応するのが面白いようで、それを何度も繰り返す。
一度圧迫が増えたと思ったら、指が増やされて、それに慣れたと思ったら、また指を減らされて、喪失感に泣いて……。
すっかり、エロい身体に変えられてしまったようで……悔しい。
「タレン、あんまり強く握らないでくれよ」
「あ、ごめ……」
耳元で「出ちゃうから」と言われたら、頬を染めるしかない。
「可愛い、タレン。すっごいエロイ」
お前の声のほうが十分エロイ、そう言い返したいけれど、口がもごついてしまう。
マイルはそのまま俺の膝に手をかけた。
あっという間に片足をズボンから抜かれて抱えられる。
丸く熱いのがウシロに当たって、息を呑んだ瞬間にデカイのが入り込んできた。
「~~~~ッ!!」
マイルの制服の襟辺りを噛んで声を堪える。
「い、きなり……」
「ごめん、我慢できなかった。痛みは?」
「ばかやろ……」
涙ぐんだまま睨みあげる。
その顔は逆効果と少し前に言われたことを思い出したけど、そんなことどうだっていい。
「落ち着くまで待つよ。だから蹴りだけは勘弁してくれ」
そう言われるとやりたくなる。
だけど俺もこの中に溜まったムズムズと熱をどうにかして欲しいから、ぎゅっとしがみ付く力を強めるだけにした。
ハァハァとたくさん呼吸をして自分を落ち着ける。
ありがとう、とぶっきらぼうだけど優しい声が耳に届いた。
「あ…い…ぁ……」
やっぱり、入れるときよりも抜くときの方が気持ちがいい。
衝撃がそこからビリビリとくる。
「気持ちよさそう」
頬に愛おしそうに唇を受けた。
見やると、マイルも眉根を寄せて気持ち良さそうにしている。
その顔を見たら、自分の中で何かが融けたような気がした。
身体もドロドロになって、そのドロドロにマイルの堅いのが突き刺さってくる。だから余計にその感触がリアルに伝わった。
「マイ…マイル……」
がむしゃらにしがみ付いて支えてもらうけれど、マイルももう限界で……。
ごめん、と謝られて、身体を反転させると、先ほどの柔らかい布とは違う、堅く痛い木の幹に縋り付く。
振り向いた瞬間、先ほどよりも奥に楔を穿たれて、顎が反れる。
俺の背中にぴったりと重なって、耳元に熱い息が吐かれる。
名前を熱く、何度も呼ばれては燃え上がらないわけもなく……。
「あっ、あっ……」
「くっ……」
前を擦られて追い上げられて、ギュッとマイルを締め付けると耳元で息が詰まった。
そうすると中のマイルが太く感じて俺も、やっぱり限界。
「も…でる……」
「僕もだ」
それからは出すことだけしか考えられなくて、自然と腰が動いた。
恥ずかしいと感じることさえもなく、夢中だった。
「……んっ」
耳元で掠れた声を聞いたとたん、俺も精を吐き出した。
中で脈打つモノの硬度がゆっくりとなくなっていく。
耳に愛してると熱っぽく囁かれ、ダランと首を下げたまま僅かにだけ頷く。
疲れた。
いつもみんなこんな全力投球でセックスをしているのだろうか。
ずるりと膨張してなくても大きいものが出て行くと、中から一緒にマイルの吐精物が落ちてくる。
その感触の悪さに、わわっと声を上げて、腰を下げた。
何故か内股になる……。
「夢中になってつい」
あはははと笑うマイルに腹が立った。
「でも、タレンも夢中だっただろ?」
「うっ……」
「次は気をつけよう」
まったくもってムードのかけらもなく、マイルの持っていたハンカチで拭われていく。
カッコ悪い。
消え去りたい。
冷静になればなるほどそういう思いで溢れる。
「こんなところでするなんて……」
「うん、もうやめよう」
「絶対だぞ?」
「うん、絶対だ」
立てる? なんて何事もなかったような顔で言われる。
なんか俺とは温度差が違う? と改めて思った。
ずっとマイルが熱く、俺のほうが冷たいと思っていたけど実は逆なんじゃ?
「なんかムカつくっ!」
「え?」
いそいそとズボンを上げて顔を膨らませた。
俺のほうがマイルの事を好きだなんて、悔しい。
絶対立場を逆転させてやることを誓う。
「タレン、どうしたんだよっ」
そう悲しそうな犬みたいな顔で追ってくるといいさ。
……じゃないと、恥ずかしくってどうしていいかわからないからさ。
唇を尖らせたら、俺の気持ちを察してくれたマイルの唇が言葉と一緒に降りてきた。
……バーカ。
呟かれた言葉に少し気持ちを浮上させた。
なんか、全部見透かされてる気がする。でも、そういうのも悪くないかな、と思う最近の俺だった。
ゆっくり、一歩ずつ。
歩めているかな?
……そうだと、いいな。
終わり♥